『酸味の代表薬 梅のお話し』ウメ(烏梅)梅は健康のバロメーター梅は中国でも日本でも、歳寒の三友、益者三友のおめでたい植物の三幅対である松竹梅の中で、ただひとつ早春の花木として取り挙げられ、観賞用としては、江戸時代以来、盆栽や庭園樹として、おびただしい品種が作出されている。
それにもまして、ウメは食用、薬用、染織用として、古代から有用樹木として賞用されている。
漢方薬でも食物でも、その特有の味の酸、苦、甘、辛、鹹の五味は、それぞれ人の臓腑器官の保全に役立つもので、梅は酸味の代表である。
酸味の天然物は、肝臓、胆嚢の機能や、眼、筋肉の作用を促進する薬味で、血液の浄化と心臓循環器に役立ち、呼吸器と大腸、皮膚、頭髪を助け、補腎の薬味でもある。
そのことから、古来塩と梅がほどよい加減のことを、調味の極意とし、健康のバロメーターとし、体調のよいことを塩梅がよい、体調を害したとき塩梅がわるいといってきた。
梅の酸味と薬効梅の実の酸味はクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸などの有機酸で、乾果ではクエン酸十九%、リンゴ酸一・五%に達する。
グラム陽性、グラム陰性腸内細菌に対して抑制作用があり、各種真菌に抗菌作用があるので、下痢や食中毒に応用される。
薬用に梅核、白梅、鳥梅の三種があるが、日本では鳥梅だけが使われている。清涼収斂薬で、止渇、止痢、回虫駆除の効があり、解熱、鎮咳、鎮嘔、去痰の作用がある。
また鳥梅は、擦傷や切り傷に対し、殺菌と肉芽の形成促進作用があるので、内用にも外用にも使われる。
梅と食酢以外には、漢方薬では五味の中で、酸味薬は極めて少ない。
主要漢薬三七〇種余を収めた神農本草経の中で十九種(四.三%)、漢方の聖典といわれる傷寒論と金匱要略に処方される漢薬一五六種でもわずかに八品(五.一%)で、その使用頻度もまた稀である。
それは酸の給源となるのは食酢以外に梅干し、梅肉、梅肉エキス、梅酢、鳥梅が主流を占めていて、これらは中国家庭での常用品で、酸の欠乏がなかったことを物語っている。
梅の酸味は、食品の鮮度を保ち、腐敗を防ぎ、脂肪を中和し、淡白にして、口中を爽やかにして食味をすすめ、疲労や夏まけの原因となる血液の酸性化を弱めるアルカリ性食品の雄でもある。
漢方の食養では、薬物に欠けているだけに、酸味の給源としての梅を忘れてはならない。
渡邉武博士『薬草百話』より

あけましておめでとうございます。
皆様、お元気で清々しく、新年を迎えられました事と存じます。
我が日中医薬研究会は何と云う素晴らしい集いでしょう。
融和と個性を無意識に調和させながら、同じ目標に向かって、ひたむきに精進されるお姿は何とも頬笑ましく美しいものでございます。
今、渡邊武先生のお姿はないけれど、この学びの場には師の「気」が漲っているのです。
師の自然を愛し、人を愛し、学問を愛するお心を心として礎いて下さった比類なき渡邊漢方道を継承発展させて参りましょう。
今年は全国大会開催の年、皆様、気で楽しくやり遂げましょう。
今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
関西支部 支部長 伊東 紗登子
謹んで新春のご挨拶申し上げます。 皆様にはお健やかに新年を迎えられたこととお喜び申し上げます。
日中ブログも初めてのお正月を迎えました。
昨年は日中ブログスタッフのスピリットを感じていただけたでしょうか?
今年も、スタッフ一同頑張りたいと思っております。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
昨年は日本中、嫌な事件が、毎日のように報道されました。
日本の精神世界が崩壊しているさまがありありと映し出されたようです。
真剣に考えないと本当に駄目になるよと天の啓示でのようにも思えます。
楽しい事件?をいっぱい報道したら、社会も変わるかもしれませんが、
そんな単純には行かないでしょう、重症ですからね。
今年は日中医薬研究会が誕生30周年を迎えます。
ほぼ三分の一世紀に渡った日中時代の渡邉先生ご活躍の軌跡を振り返り、
私たちは新たな決意で、社会貢献を果たしていきたいと思っています。
30年前にはパソコンもインターネットも携帯電話もありませんでした。
替わりに手書きの大会研究発表誌がありました。
回転寿司もコンビニもクロネコもありませんでした。
青少年の自殺やいじめもそんなにはありませんでした。
セレブなんて言葉もありませんでした。
ペットボトルも調剤薬局も介護保険もオーラの泉もありませんでした。
有ったのは・・餞別もらって中国研修旅行とか、
町かどで遊ぶ年令ふぞろいの悪ガキの声、お腹の大きな女性が子供を連れて
買い物、飾らない言葉が飛び交う公設市場のおじさんおばさん・・・。
何が変わったのか、
こんな短期間に人類の物質革命が行われていることに、
気がつかないくらいで、歴史を振り返ってもお手本がない状況でしょう。
われわれは、いったい何処へ行くのでしょうか?
皆さんもさまざまな思いが胸を去来することでしょう。
30年前には、まだ生まれてなかった会員さんもいます・・・。
さて現代に、そして今日に生きる我々は、
未来を創造していかねばなりません。
どんな過去を創るか、
どんな未来を創るかはすべて自分の手に懸かっています。
その意気込みが世界を創る。自分のほかに誰がいるのか?
自分の人生を創るのに。
そう、これからは全身全霊こめて未来を創ってゆかなくてはなりません。
会員は、「渡邉先生に頼っていた時は去ってしまったこと」を、
今さらながら胸に刻み込まねば、新たな未来が見えてこないでしょう。
思いもよらない現代の様々な事象にも、
われわれは対応できる術を学んできました。
それは陰陽に立脚した東洋哲理です。
でも、それを活かしきっているのでしょうか、
今年の全国大会の研究発表は、自分の実力がどの程度なのか、
それを自分で知るまたとないチャンスであり、
自分に課したチャングム試験と捉え挑戦していきたいと思っています。
(今年は9月に日中医薬研究会の全国大会を開催します)
暦で言う、十二支の象意では、昨年の「戌(じゅつ)」は滅ぶ、
または切ることで、万物が滅び行く状態でした。
今年の「亥(がい)」は閡(とじ)るで、万物の生命力が凋落したが、
すでに種子の内部に生命が内蔵された様であり
ます。すなわち次の歳「子(し)」は孳(ふえ)るで、
新しい生命が種子の内部から萌し始める状態であって、
この「子」に繋げる直前の今年「亥」は、もっとも純粋にかつ強い種子
次の世代をしっかり作り始める時期にあたるのです。
(引用:吉野裕子「陰陽五行と日本の民俗」)
今の時代を、
そして何がこれから必要とされるか、
これも今年の年始めに考えたいと思います。
日中医薬研究会・関西支部支部長・田中 英樹