2013年最終の日中医薬研究会で勉強中(^-^)/
生姜(漢方名ではショウキョウと読みます)を学んでます☆
生姜…生。
乾姜…蒸したもの。揮発成分はとんでいる。
乾生姜…そのまま乾燥、石灰をまぶす。
これが日本薬局方の生姜。
古方の処方で用いられる乾姜。
水分を抜いた乾姜は、乾いて成分が濃縮されている分、
辛みは4〜5倍に相当します(^_^)
by深井数教
皮膚・粘膜の炎症に効く血剤キハダ(黄蘗・黄柏)良薬は口にし われわれが日常食べている食物の五味の中には、苦味のものは少なく、一方、健康を害した時に飲む薬に、苦味のものが多い。
漢方では、苦味の薬物群を苦寒剤と呼んで、これが心臓や血液循環器の疾患、小腸の炎症の補正を図り、その反応は舌に顕著にみられ、肝臓、胆嚢の働きを助け、腎臓、膀胱の働きを活発にする原則があるとしている。
そこから、古来「良薬は口に苦し」の格言がある。
総括して苦寒に属する漢薬は、血剤ともいわれ、牡丹の古血(オ血)を体外に排除する血剤とは対照的に、皮膚、粘膜の表在的炎症を中和し、新しい出血、充血、炎症を緩解する特性を持っている。
近代医薬学では、薬草中のアルカロイドや苦味配糖体などの苦味成分がその有効成分とし、強心、止血、抗炎症、利尿、鎮痛、鎮静などの諸作用があることを科学的に究明しており、古来の経験薬としての和漢薬の効果を実証している。
有用樹木・キハダ キハダの樹皮の黄色の内皮を、古来、日本でも中国でも、黄柏(黄蘗)と呼んで、薬用および染料として賞用してきた。
またその材も、辺材は灰白色、心材は灰黄色で堅硬かつ狂いが少ないので、家具や飾板、細工物に応用され、外皮のコルクも利用されている。
キハダは、日本各地の山地に自生するミカン科の落葉高木で、北海道から本州北部には、樹皮の薄いヒロハキハダが自生する。
中国でも、河北、四川、旧満州などの東北区に多い有用樹木である。採取は、夏の土用前後に伐採して、すぐその場で輪切りにして幹皮を縦に切り込み、キハダの枝の先を薄く尖らせた棒で、新生組織に沿ってはぐ。
はいだ樹皮を広げると、この時期ならコルク層と黄色~黄褐色の樹皮とが容易に分離する。
黄柏とキハダエキスの薬効 キハダの水製エキスは、といい、のが創めたと伝えられている。
奈良の寺には役の行者が使ったと伝えられる加持井戸があり、さらに陀羅尼経を唱え唱え濃縮したといわれる抽出釜と濃縮釜が残されている。
この水製エキスにアオキエキスを加えた製剤は、吉野の大峯山、四国の遍路や石槌山、木曽の御嶽山などの行者が、陀羅尼助、陀羅助、百草、などの名で賞用し、全国的に知られた有名生薬製剤である。
キハダの粉末、または煎剤(1回量4~5g)や水製エキスは、苦味健胃、整腸、腸内殺菌、消炎薬とし、胃腸薬として広く応用され、熱性下痢、血便、黄疸、瘡瘍や体表の炎症、外傷、切傷、打撲傷、出血、火傷、湯傷などに速効のある極めて重宝な薬である。
骨折、打撲傷、ねんざなどには外用し、突き眼や眼の充血にはこれで洗眼するとよい。
古方薬品考の著者・内藤尚賢は
「黄柏は寒冷の地に生育するので、その精力は皆皮に在る。故に人の皮膚に主効がある。
その気味は極めて苦く寒降であるから、皮間の鬱熱や黄疸を治し、二腸中の結熱を除く。」と、
漢薬の血剤中に占める黄柏の効能の特性を象徴薬理的に挙げている。
キハダの成分と染色 黄色成分は、苦味質のアルカロイド、ベルベリンとパルマチンで、これが黄柏の有効成分である。
そのほかに無色結晶性のオーバクノンとオーバクラクトンやパルミチン酸、リノレン酸とフィトステリンとのエステルが含まれ、火傷や湯ただれに効くのは、この脂肪酸エステルが有効成分とされている。
ベルベリンは天然の唯一の塩基性色素で、絹や羊毛は微酸性の温湯(50~60℃)で黄色に、クロームの媒染では鮮黄色に染まる。
木綿は、タンニンやアンチモン塩の媒染により黄色に染まる。
黄柏の黄色は、中国では服色の最上位とされた。我が国でも、古くから貴ばれたことは、天平の古文書に見られ、和紙に染めたものは、石清水八幡宮や春日神社の宣命用紙や、また昔の戸籍簿の用紙などに使われた。
富山や秋田では、キハダの葉を生のまま染料としている。
渡邉武博士「薬草百話」より
漢方薬にも民間薬にも応用されるカラスウリの名称と産地ウリ科の多年生の蔓草であるカラスウリは、本州、四国、九州から台湾、長江以南の中国各地にかけての、藪地や山麓に自生している。
漢名は王瓜または土瓜と記され、その果実、種子、根は、それぞれ王瓜実、王瓜仁、土瓜根(王瓜根)と称され、陶弘景の『名医別録』(紀元500年頃)以来今日まで、漢方薬としても民間薬としても応用されている。
雌雄異株で、8~9月の盛夏に咲く、五裂した裂片の先が糸状に細かく裂けた特異な白色の花と、秋から初冬に、藪陰にに鶏卵大の紅い果実を結ぶ詩的な風情は、どこでも見受けられる。
それだけ各地に、ウメネ(奈良、和歌山)、ゴオリ(大分)、クソウリ(隠岐)、クソゴイ、クソゴリ(熊本、鹿児島)、ゴイ(鹿児島)などの方言で呼ばれている。
クソとかイヌノクソ(ゴイは鹿児島の方言でイヌの糞のこと)などは、どこにでもごろごろしている無用の長物扱いされてつけられた汚名である。
筆者は、カラスウリとその同属のキカラスウリやオオカラスウリの根に大量に含まれる澱粉に着目して、戦時中の資源不足の時、鹿児島、宮崎県下で大量に集めて澱粉を製造し、立派な医薬原料として活用し、その汚名をそそいでやった経験がある。
カラスウリの成分と応用 果実を王瓜と呼び、薬性苦寒で、中国では手の少陰心経と足の少陰腎経に以上があるものに用いられ、消渇や黄疸、胃潰瘍、乳汁不足などに4~9グラムを煎用する。
民間では、赤熟した実を酒に浸してすり潰したものを、しもやけ、ひび、あかぎれに外用する。
生のまますり潰した汁を使うこともある。
種子は、王瓜子、土瓜仁といい、日本ではその形が結び文に似ているので、多未豆左(たまずさ・玉章)と呼ばれ、また黒味の強い褐色の種子は大黒天のようであるので、お小遣いがたまるように財布に入れる習慣があった。
種子中には、脂肪油26%を含み、その脂肪酸は固体脂肪酸30%、液状脂肪酸66.5%である。
薬性苦寒で、消炎、鎮咳、償セ痰薬として、胸痛、便秘、咳嗽、心臓喘息、狭心症などに応用される。
3~5グラムを煎用する。
根は王瓜根または土瓜根と呼び、薬性は苦寒の血剤で、手の少陰心経、手の太陰肺経、足の太陽膀胱経の経絡に異常のある症状を改善する。
血熱をさまし、水滞を利尿で去り、さらに鬱血、女レ撃闥r除する特性があるので、消炎、鎮痛、利尿、排膿、駆女レ撃フ作用があり、黄疸、帯下、閉経、打撲傷、女レ撃ノ応用する。
6~9グラムを煎用する。
中国では、土瓜根の粉末を扁桃腺炎、のどの炎症に吹きつけ、しばらく口に含み、痰涎を吐き出して効をあげている。
また、おできに塗布する。
澱粉、アルギニン、コリン、苦味質などを含む。
ただし、妊婦や胃の弱いものは服用しないように注意している。
カラスウリを主薬とした漢方薬 種子(王瓜仁)は同属のキカラスウリの種子(括楼仁)と同効であるので、括楼仁と同様に応用されている。
括楼仁、王瓜仁には、胸部に熱があって、胸部が痛み、みぞおちが石のように硬くなって痛み、口や舌は乾き、口渇があり、息切れがして、脈が沈んで緊張している病症群ーこれらを漢方では結胸証と呼ぶーを解除するのには欠かせない薬物で漢方の原典『傷寒論』や『金匱要略』の古方にも、後世の処方にも、これを主薬とする薬方は多い。
その代表的な名方を2~3紹介する。
・小陥胸湯
(傷寒論ー心下部が痛み、胃痛、胃酸過多、胆石症、肋膜炎、肋間神経痛の者。)
・括楼薤白白酒湯
(金匱要略ー胸背痛、心下部疼痛または喘息咳唾のある肋間神経痛、肺炎、喘息、狭心症、胃痛、胆石の者。)
・括楼枳実湯
(万病回春ー粘液痰、胸痛があり、急性・慢性気管支炎、肺炎、肋間神経痛、胃酸過多症、咳嗽、ヘビースモーカー。)
土瓜根(王瓜根)をし薬とした方剤には『金匱要略』の婦人雑病編に土瓜根散(土瓜根・芍薬・桂枝・じゃ虫)があり、のぼせて下腹部が満痛して、月経不順、帯下があり、血の道症や人口流産の不調を訴える者、月に二度生理がある婦人や、男子でもいんきん、たむしや陰部の腫れのある者に主効がある。
渡邉武博士「薬草百話」より
写真は青木繁伸氏による。
皮膚粘膜に刺激を与え、健康美を護る生姜日本のスパイスの代表選手ショウガは熱帯アジア原産であるが、熱帯・温帯の各地で栽培されている。
日本には中国から渡来したので、古名を呉ノハシバミという。
シソをソフトなスパイスとすれば、ショウガは日本の代表的なハードな香辛料で、山椒、番椒とともに、薬味の代表選手である。
東大寺のお水取り(修二会)の食堂の作法を拝見したとき、この天平時代から続いた行法の配膳の後に、生姜、山椒、胡椒の三種の薬味が常備されているのを知って、用意周到なのに感心した。
日本の食生活には欠かせない生姜早春にはもやし生姜「芽生姜」、夏秋には新芽や茎葉を伴った新根茎「新生姜」、冬は気味が高く温性の強い肉根茎「ひね生姜」が、四季を通じて日本の食膳に登場する。
新生姜は歯切れがよく、香気があって、まだ辛味が強くないが、ひね生姜は甚だ辛い。
新生姜は、生のまま味噌を挟み、膾や焼き魚に添え、衣を着せて精進揚げとし、味噌漬、粕漬、砂糖漬、蜜漬、梅酢漬の紅生姜などに、またひね生姜は細かく刻み、擂りおろして、魚のなまぐささを除き、膾やすしに添え、甘酒には欠かせない。搾り汁は酢に合わせて、生姜酢とし、生姜糖や生姜飴まで、幅広い分野にわたって使用されている。
漢方薬としての生姜なぜ生姜が日本食に欠かせないスパイスなのかを、漢方薬としての応用面から探ってみよう。
薬用には、新生姜より気味の高いひね生姜をそのまま刻んで生で煎用するか、乾燥した粉末または煎剤とする。そのまま乾したものを乾生姜、蒸して加熱乾燥したものは乾姜と呼ばれる。
生姜は芳香性健胃整腸、駆風、矯味、食欲増進薬として、新陳代謝機能を促し、水毒を去る目的で、嘔吐、咳嗽、腹満、発熱、頭痛、鼻づまりなどに応用される(一日3~4g)。
乾姜は腹の冷えて痛むもの、腰痛、腹痛、頭痛、瀉下などに応用される。
これを漢方では辛温の気剤という。辛温の気剤は生姜に限らず、肺・鼻・皮毛(毛穴)などの呼吸器官からの発散を補い、大腸の働きを助けるので、腸のガスを発散する駆風作用があり、脾胃の活動も助けるので、健胃整腸薬と呼ばれる。
さらに心臓循環器の負担の結果現れている頭痛、発熱、咳嗽、嘔気などの生理症状を、生姜は発散解消する。
結果的には辛温剤は、心臓を益することになり、消化吸収から排泄、血液循環、呼吸器の活動に寄与することになる。
要約すると生姜は、湿気を気化して払い去り、血行をよくし、皮膚と呼吸器、胃腸の粘膜に働いて健全化を図り、そこに発生する微生物の発育を阻止する抗菌・抗カビ御作用を発揮することになる。これが香りあるものを皮膚や頭髪に化粧料とする慣習であり、疾病に漢方薬として使用されてきた原理である。
数多い漢方処方中、生姜または乾姜を配合したものは実に56%に達していて、数多い香辛料の中でも、生姜は東洋人の体質に最も適合したものであることを物語っている。
ショウガの成分と辛温剤ショウガには辛味成分と芳香成分とが共存している。辛味成分には結晶性のジンゲロン0.4%と油状のショウガオールがあり、芳香成分は精油2%で、ジンギベレン、ジンギベロール、カンフェン、ボルネオールなどが含まれている。
つまり辛温剤は皮膚粘膜に刺激を与え、健康美を護る食品・薬物で、食べ物を腐らないよう、カビないようにして、速やかに消化吸収する薬味であることである。
腐りやすい食品は美味なもので、生物の生存に必須の蛋白源である。
したがって先人は、肉、魚、卵、豆腐などを食べる時、必ず生姜、山椒、番椒、胡椒、辛子、わさびなどを薬味として添えることを教えていて、それが不足したり、多すぎると、肝臓がそのしわ寄せを負うことである。
渡邉武博士「薬草百話」より
◎カラスビシャクとハンゲの名称と産地
カラスビシャクは、わが国各地の田畑に多く野生する多年草で、六月ごろ、茎の頂に蛇が頭をもたげたような形で肉穂花序が開き、その仏苞葉の形状から烏柄杓と呼ばれるほか、雀の柄杓または柄杓草の名がある。
また、地下にある径約1cmの球茎の形や、それから出ている1~2枚の葉の葉柄の下部に着くむかごの形状とから、ヘソクリ、ヘブス、ハンゲなどの別名がある。
ハンゲと呼ばれる由来は、夏の半夏生(げし夏至から11日目で陽暦7月2日ごろにあたる)のころに採集する薬草であるためで、球茎を薬用とし、生薬名も半夏と呼ばれる。
田畑の雑草で、球茎とむかごとで猛烈に繁殖するが、これを畑仕事の合い間に農夫が掘り取り、家に持ち帰る。婦女はこれを里芋を洗うように桶に入れて皮を取り、日乾する。
干し上がると、真っ白な球茎半夏ができる。
そして、仲買人が家々に回ってきて、この球茎半夏を買い取っていく。
ちなみに、へそくり金の言葉の由来はヘソクリを売って婦女が得た臨時収入であることによるといわれている。
ヘブスは、トリカブトの根(附子)に似て貧弱な球根であるという意と考えられる。
江戸時代には、鹿児島、熊本、大分県産が良品とされ、西日本に広く産出し、江州半夏や三浦半夏の名もあったが、今日では薬用としての生産はなく、栽培生産が試みられている程度で、ほとんど韓国と中国とから輸入している。
中国では四川、湖北、安徽、江蘇、浙江、河南の諸省から産出し、四川産が質・量ともに主流を占めている。
◎成分と薬効
半夏は古く『神農本草経』の下品に収載されていて、漢方では欠くことのできない重要生薬で、鎮嘔・鎮吐の要薬である。嘔吐を鎮めるだけでなく、鎮咳、鎮静、去痰、利尿の作用もある。
胃内停水があって、その逆上のためにおこる悪心、嘔吐、咳嗽、心悸、目眩、頭痛、咽喉腫痛、妊娠悪阻、不眠症、神経症などに幅広く賞用される。
ただし、そのまま服用するとえぐ味が強く、咽喉を刺激してかえって嘔吐を催すので、必ず生の生姜か乾姜と共用することを忘れてはならない。
一日の用量は、5~8gを煎用とする。
成分はでんぷん澱粉、精油、粘液質、脂肪油、蓚酸カルシウムの針晶、無機質、グルコーゼ・ラムノーゼなどの糖類のほか、微量のアルカロイド様物質、コリン、ベータシトステロール、ベータントステリールグルコサイド、トリテルペノイド、グルクロン酸、微量のエフェドリンなどが知られている。
特異のえぐ味の成分はホモゲンティシック酸といわれていたが、最近、3・4ジヒドロキシベンツアルデヒドの配糖体が検出され、そのアグリコンにも強烈な刺激味のあることが報告された。
半夏の鎮嘔成分は、グルクロン酸の誘導体と、一種の水溶性配糖体と考えられている。
アルカロイド様物質は、中枢神経と運動神経末梢抑制作用、唾液の分泌促進作用が認められている。
◎半夏の応用
半夏は、民間薬として脚気や船酔い、胃腸病、神経痛、毛生薬、底豆などに利用されている。
中国では、外傷出血や子宮頚糜爛に粉末として塗布し、蛇による咬傷には新鮮品をつ搗いてはりつけている。
漢方では薬性辛平の水剤として広く応用され、脾胃二経に働き、胃内に停滞した水毒を除くため、激しい嘔吐、特に妊娠悪阻に特効があり、小半夏加茯苓湯(半夏・茯苓・生姜配合)が賞用されている。
さらに激しい悪阻には、伏竜肝湯が応用される。これは、前処方にかまどの土か、かわらけを加えたものである。
悪阻だけでなく、車酔いや船酔いの予防と治療にもよい。
また、鎮咳・鎮静には厚朴を処方した半夏厚朴湯が神経症、気鬱症に賞用され、柴胡、黄芩を処方した大柴胡湯、小柴胡湯などに頻用される。
激しい咳嗽には桂枝と麻黄人参を配した有名処方、小青竜湯があり、嘔吐、下痢、腹中雷鳴などの胃腸障害には、黄連、黄芩、人参、甘草、乾姜を加味した半夏瀉心湯、甘草瀉心湯、生姜瀉心湯などが今日でも繁用されている。
渡邉武博士『薬草百話』より
「写真撮影:青木繁伸氏(群馬県前橋市)」