
日本人は日常の食生活の面で、水分を摂りすぎています。
米や麦、野菜、果物など、いずれも水分の多いものばかりです。
これらを常食としているうえ、さらに住んでいる土地柄が、乾燥したアメリカやヨーロッパ大陸と違って、非常に湿気が多いところです。
だから、日本人は皮膚から水分を出しにくい状態にあるといえます。
このような風土と食物があるうえに、季節によってご馳走をたくさん食べたり、ヨーロッパの飲料であるビールなどを飲む機会が多くなりますと、どうしても食べ過ぎや飲みすぎの「胃内停水」の病気にかかりやすいものです。
人間の排泄物は、健康のバロメーターです。毎日食べているわけですから、食べたものの排泄物は出さざるをえません。
排泄の大便には、便秘症と下痢症と快便があり、これが物差しになっています。
胸やけがしたり、ゲップが出たりすると、ただではおけないので、肝臓や胆のうに負担がかかり、解毒しなければなりません。
大便が黄金色を呈するのは、その胆汁酸が出るからです。
下痢すると便は白色便になります。
下痢をするときは、水分が多くなって、小便で出せないのを腸から出すから白くなるわけです。
腸に炎症が起こったり出血していると便は赤くなります。
食物が胃から腸に移るときは、ちょうどおかゆみたいな状態にあります。
そして腸壁から水分を抜いて肝臓に送られ、濾過して膀胱から出します。これが小便です。
水分が抜けた大便というのは、適度な固さで排泄されるのです。
日本人は食事に水分が多いうえに、多くの飲料を摂っています。
皮膚や膀胱から出しきれないので下痢するのは当然なことです。
それに膀胱から出すには、塩分がなければ出せないのです。
塩分不足になると、腸壁から吸収されずに下痢するというわけです。
日本人は、間違った常識――塩分を摂ると肝臓に悪い――という医者の言葉を信じて塩分不足になり、下痢しています。
塩分なしでは、水分を下痢で出すか、汗で出すか、涙で出すしかないのです。
下痢の原因は、多量の水分摂取と塩分不足にありのです。
便秘症はどうなのでしょうか。
便秘は血証をひき起こす原因であり、ヘドロが腸に停滞していることです。
腸というのは最末端で、たまったものを腐敗せぬように水分を抜いて送り出すのが役目です。
農耕民族である日本人の明治までの食生活は、せいぜい生のものは魚か鶏か野鳥程度で、ヘドロ化する大動物の肉は新鮮なときは死後硬直のため固くて食べられません。
私たちが日常食べている肉は腐敗寸前にして食べているわけですから、胃や腸で腐らぬうち、かびないうちに、排泄しなれればなりません。
この防腐、殺菌作用と送り出す作用をするのが、スパイス、いわゆる香辛料なのです。
肉食の外国ではふつう五十~六十種類のスパイスを使っていますが、これが腸内でのヘドロ化を防ぐ役割をしてきたのです。
寿司や刺身のわさびや、生姜や唐辛子は日本流のスパイスですが、肉食にはたった三、四種類では足りません。
これでは日本人の腸のなかはヘドロ化せざるをえません。
肉食にはスパイス不足で便秘症をいっそうふやしているのです。
塩分不足で下痢症になるか、スパイス不足で便秘症になるか、日本人はこのどちらかに属しているのです。
渡邉武博士著『漢方が救う人体危機』より
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