漢薬の血剤(抗炎症剤)の主薬 コガネバナはコガネヤナギとも呼ばれるが、花色は薄紫で7~8月頃開花し、薬用部の根が鮮黄色であることから名付けられたものである。
中国北部、東北部、内蒙古から東シベリヤ、朝鮮に原産するシソ科の多年生草本で、薬用・観賞用として栽培されている。
中国では河北、山西、雲南、四川省に、花色も黄色のキバナオウゴン(黄花黄芩)など同属植物もあるが、薬用にはコガネバナがつかわれている。
黄芩は、漢方の血剤(苦寒剤)である抗炎症剤の主薬 で、人体の熱症、炎症を寒剤で中和し、充血、出血、内出血を大小便で体外に排除する漢方独特の作用を持ち、柴胡の薬効を助け、増強するので、大柴胡湯、小柴胡湯などの柴胡剤に加味されるほか、皮膚や呼吸器、消化管の炎症などに幅広く繁用されている。
柴胡の薬性苦平より寒性が協力な苦寒剤で、黄柏に類似した応用面を持っている。
著者は40年前(昭和57年の40年前)、華北や内蒙古の薬用資源調査のとき、大同や内蒙古では、農業品評会でコガネバナの茎葉が茶剤として出品され、中国ではねを薬用とするだけでなく、夏季の茶剤として、その茎葉を刈り取って応用していることを知った。
茎葉にも苦味成分のフラボン配糖体を含むので、炎暑の口渇を癒すのには最適のものといえる。
コガネバナの薬効と成分 黄芩は消炎、解熱、利尿剤として、炎症、充血、発熱を伴う疾患で、心下のつかえ、胸や脇の圧迫感があり、内熱のため精神や心臓に苦悶のあるもの、身体の嫌な温熱感と下痢を目標にして、各種の炎症、出血、充血を初め、温熱性黄疸、炎症性結膜炎、おでき、呼吸器感染、熱性下痢、腎炎、痔などに応用される。
黄芩の引経は、杏仁、山薬で示した手の太陰肺経と、柴胡で示した足の少陽胆経薬ならびに手の陽明大腸経として示され、薬能の幅広いことが察せられる。
主成分はフラボン配糖体のオオゴニンとバイカリンで、バイカリンは加水分解によってバイカレンとグルクロン酸に分離する。
近代薬学的には、胆汁分泌促進作用、利尿作用、毛細血管透過性抑制作用、抗アセチルコリン作用、抗アナフラキシー作用、実験的喘息抑制作用などが証明されて、漢薬黄芩の薬能を裏書している。
黄芩配合の著名処方 黄芩は、大、小柴胡湯に配合されるほか、多くの著名処方に配合されている。
・黄芩湯 (発熱性腹痛下痢)
・黄芩半夏生姜湯 (急性腸炎)
・黄土湯 (下血、吐血、鼻血、不眠)
・葛根黄連黄芩湯 (急性腸炎、歯痛、喘息、肩こり)
・乙字湯 (痔)
などを初めとして、
便秘、のぼせ、精神不安、諸出血、打撲、高血圧症、動脈硬化症、脳出血、脳充血などの血毒を除く有名繁用処方
・三黄瀉心湯
・黄連解毒湯
・黄解丸
などに配合され、他に代替のない重要漢薬である。
渡邉武博士「薬草百話」より

写真は群馬大学社会情報学部の青木繁伸氏の撮影されたものです。
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